食べること生きること

食べることは、いちばん身近な「自分との対話」。

その時間に、少し立ち止まってみたとき、私の中で何かが静かに変わり始めました。

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目次

「食べる」ことに緊張していた頃

子どもの頃、食卓は少し緊張する場所でした。

「残さず食べなさい」
「早く食べなさい」

そんな言葉の中で、
自分のペースを置き去りにしていたように思います。

ごはんを残したとき、
食べ終わるまで席を立てなかったことがあります。

お腹はとっくにいっぱいで、苦しいのに。
誰も悪気はなかったのだと思います。

それでも、
あの時間の長さと息苦しさは、今も体が覚えています。

お腹の声よりも、周りの期待を優先するうちに、
「食べること」そのものが、
どこか怖いもののように感じられるようになりました。

誰かの評価を気にした食べ方

大人になると、今度は

「細いほうがきれい」
「食べすぎはよくない」

そんな価値観が、心の中へ入り込んできました。

気づけば、
食べることを我慢することで
「ちゃんとしている私」を保とうとしていたのです。

けれど、心が張りつめているときほど、
逆に食べ物に手が伸びてしまう瞬間もありました。

あたたかいごはんや甘いものが、
ほんの一瞬でも「安心したい」という願いを叶えてくれるから。

今では、それを責める気持ちはありません。

食べることで心を守ろうとするのは、
「もう少しだけがんばろう」とする、小さな防衛反応。

逃げではなく、心が生き延びようとする、自然な力なのだと思います。

エネルギーを受け取るということ

少しずつ気づき始めたのは、「食べる」という行為が、
恐怖でも評価でもなく、エネルギーを受け取り、循環させる行為なのだということ。

ある朝、
一杯の味噌汁を前に、手が止まりました。

立ちのぼる湯気をじっと見つめ、ひと口含んだとき——

「ああ、これが体に染みていく」

そんな感覚が、静かに広がっていったのです。

体が求めているものを、やさしく受け取る。

それは、
生きる力を内側に戻していく、小さな儀式のようでした。

食べるたびに、自分の中で何かがめぐり始める。

心の奥に、静かなぬくもりが灯るように。

わたしのペースで味わう

最近は、食べることを
「自分のリズムを取り戻す時間」
として感じています。

焦らず、
比べず、
ただ、ひと口ずつ。

食事のたびに、「私はここにいる」と思えること。

その実感が、日々をやさしく整えてくれます。

食べることは、暮らしの中でいちばん身近なセルフケア。

今日も、自分のペースで、その時間を味わっていこうと思います。

気づきのメモ

次の食事のとき、
ほんの数秒でいいので、目を閉じて深呼吸してみてください。

そして、最初のひと口を、
ゆっくり、ゆっくり味わってみてください。

それだけで、
心と体のあいだに、小さなぬくもりが戻ってきます。

そのぬくもりが、
「生きる力」と呼ばれるものなのかもしれません。

なか

さて、今日のあなたは——
どんな気持ちで、どんな速さで、その一口を迎えますか?

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